探偵、平松総合調査事務所がDV事案を多く手掛けることになった理由

私自身、探偵業をしているなかで、多くのDV事案を見てきました。
探偵業を始めた初期のころは、配偶者の方から酷い暴力を受けている方を見て「ここまで暴力を振るわれているのになぜ別れないのだろうか」という疑問を持つ程度でしたが、私の中で大きく変わる事件がありました。

随分昔の話になります。

浮気相談の中で、相談者の方が来る度に顔や腕に痣(あざ)が出来ていた事から、会話の一つとして「どうしたの?」と伺うと、「旦那の機嫌を損ねると手が付けられなくて、よく殴られるんです。だから夫の浮気を突き止めて別れたいのんです。」と。
これは証拠を少しでも早く掴んで離婚できるようにしてあげようと考えていましたが、この頃の警察は「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」的な考えであって警察は民事非介入の原則から相手にもされませんでした。
調査は無事終わり報告すると、その方は、「これで夫と離婚できます。」と喜んで帰られました。
その後、2週間ほどしたころ電話があり、自宅の中に隠していた調査報告書が見つかり、報告書を突きつけられ、殴る蹴るの酷い暴力を受け、調査報告書は破られ、証拠のテープは目の前で潰されたので再発行できませんか?という電話でした。

報告書はパソコンの中にデータがありましたし、テープもコピーをしていたので「再発行できますので、すぐにでも離れた場所に家を借りて、弁護士を選任して」と伝え、指示通り「自宅を出て弁護士を探して闘います」とのことだったのですが……
しばらくし再度電話があり、「平松さん本当にお世話になりました」という電話が掛かってきたのですが、切った後、嫌な胸騒ぎがしたので、その方の新しい住所を調査員に確認させ行ったところ、お風呂場で自殺行為をして直後でした。
すぐに救急車を呼び、私も救急車に乗り病院に付き添いました。直後だったことと救急・病院の対応が早かったこと為、命には問題はなかったのですが、病院から警察に通報があり、私も状況を説明したりと大変でした。
その経験から、「探偵は調査し報告するだけでは駄目なんだ。もっと調査より優先するものがあるのではないだろうか?」と考え、現在の様に相談者様から話を聞き取るというスタイルになりました。
その理由調査優先より人命優先という答えを出したからです。

その後、配偶者からの暴力を防止し、被害者の保護等を図ることを目的として平成13年4月13日法律第31号にて制定された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」「DV防止法」ができたのですが、制定当時、加害的な暴力だけが暴力とされていました。

その後、多くのDV事件を実践で対応し、またモラルハラスメント(言葉の暴力)については、大阪弁護士会所属 あおば法律事務所 橋本智子弁護士から法が制定される一年ほど前からレクチャーを受け、資料を頂き勉強をしてきたことから、多くの裁判でも報告資料が勝訴へと導いてきました。

前置きは長くなったのですが、平松が実践で行ってきたDV攻略策をお伝えします。

DVの種類と対応について


 DVには「身体的暴力」「精神的・心理的暴力」「性的暴力」「経済的暴力」「社会的隔離」「子どもを使った暴力」という6つの種類の暴力があります。

(1) 身体的暴力
DV被害で最も報告が多いのが身体への暴力です。
殴ったり蹴ったりして身体にダメージを負わせることは、刑法第204条の傷害や第208条の暴力に該当する犯罪行為といえます。それ以外にも身体的暴力に該当する行為として、
物を投げつける、小突く、手拳で殴る・平手で打つ、殴るふりをする、髪を引っ張る、引っ張って引きずり回す、怪我をしているのに病院に行かせないなどです。

こんな場合は、迷わず病院に行き「夫から〇〇が原因で暴力を受けました」ということを正直に話をして医療カルテに記録を残していただくようにして下さい。
また医師から対策や、警察への通報があれば速やかに母子支援センター等の行政機関との連携も速やかに行われます。
またその様な話がない場合でも後日の為に診断書を頂くことが必要です。

(2) 精神的・心理的暴力
心ない言葉で相手の精神にダメージを与えることもDVの一種であり、モラルハラスメント(モラハラ)という暴力があります。
ただ精神的な暴力は、肉体的暴力と違って外目から判断がつきにくいものですから、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神障害と判定されれば、刑法上の傷害罪に該当するのですが、言葉の暴力の立証は本当に難しいのが現状です。

大声で怒鳴る何でも従うように強要する何を言っても無視する大切にしているものを捨てる・壊す嫌味を言う発言権を与えない交友関係や電話の内容を細かく把握しようとする不機嫌になると物に当たる脅す見下す外出を禁止する等ですが、これ一つを取って暴力と判断することは出来ません。
こんな行為が続く場合は
第三者に判断して頂けるように記録や音声が必要となります。
日記の書き方、音声の録音の仕方は絶対攻略 自分でできる浮気調査のページ内 「音声を録音しましょう」・「情報を整理しましょう。」でも書いてあるのですが、モラハラ夫・妻には大きな特徴があります。それは「自己愛主義者」の方が多いことです。


自己愛が異常に強い方は、NPD(自己愛性パーソナリティ障害)とICD-10F60.8「他の特定のパーソナリティ障害」に分類されており、アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」では301.81/WHOの診断ガイドライン「ICD-10」では、自己愛性パーソナリティ障害をF60.8「他の特定のパーソナリティ障害」に分類されている精神障害の一つとして診断しています。

DSM-5 301.81 自己愛性パーソナリティ障害の症状として挙げられているものは、
01.人より優れていると信じている
02.権力、成功、自己の魅力について空想を巡らす
03.業績や才能を誇張する
04.絶え間ない賛美と称賛を期待する
05.自分は特別であると信じており、その信念に従って行動する
06.人の感情や感覚を認識しそこなう
07.人が自分のアイデアや計画に従うことを期待する
08.人を利用する
09.劣っていると感じた人々に高慢な態度をとる
10.嫉妬されていると思い込む
11.他人を嫉妬する
12.多くの人間関係においてトラブルが見られる
13.非現実的な目標を定める
14.容易に傷つき、拒否されたと感じる
15.脆く崩れやすい自尊心を抱えている
16感傷的にならず、冷淡な人物であるように見える
これらの症状に加え、自己愛性パーソナリティ障害の人物は傲慢さを示し、優越性を誇示し、権力を求め続ける傾向がある。彼らは称賛を強く求めるが、他方で他者に対する共感能力は欠けている。一般にこれらの性質は、強力な劣等感および決して愛されないという感覚に対する防衛によるものと考えられています。
のなかで分類避けています。

自己愛の強い人と生活をしていると怒李に対し、ONとOFFのスイッチが必ずあります。
そのことをよく考えてみましょう。

自己愛の強い方は、相手に対して
●弱い人間
相手から見て、対象者となる配偶者を攻撃しても差し支えないくらい「弱く見えている」(=反撃が怖くない)

●有害な人間
相手からみて配偶者の行動や存在がイライラさせられる。相手と違うものを配偶者が持ち、嫉妬している場合など。

攻略方法は、その相手の行動を考えて効率よくONとOFFのスイッチを入れ、その間の状況について必ず録音し、日記に記録することが大切です。

それを一定期間録音したうえで心療内科を受診し、

診断書を頂くことで意外に簡単な方法で証拠保全が可能となります。

(3) 性的暴力
夫婦間であっても、暴行・脅迫を用いた性行為は刑法第177条で禁止されています。
また、中絶の強要や避妊に協力しないことも性的暴力の一種です。
【性的暴力とみなされる行為】
・嫌がっているのに性行為を強要する
・見たくもないポルノビデオやアダルトサイトの視聴を強要する
・中絶を強要する
・避妊に協力しない
・子どもができないことを一方的になじる
・他の女性との関係を認めさせる。

夫婦間における性暴力の立証は、非常に難しいと思います。
   

(4) 経済的暴力
 相手を経済的に困らせる行為は経済的暴力といわれています。
生活が苦しい家庭だけではなく、経済的に余裕があるのに配偶者に対するお金の管理が厳しい家庭も少なくはありません。

【経済的暴力とみなされる行為】
・明らかに生活費が足りていないのに渡さない
・家計を必要以上に厳しく管理する
・家庭の収入について教えない上に使わせない
・配偶者の収入や貯金に勝手に手を付ける
・配偶者が外で働くことを妨害する
・無理やり仕事を辞めさせる
・洋服などを買わせない 

(5) 社会的隔離
配偶者の家族、友人、会社などすべての人間関係を絶たせて、社会的に隔離することもDV行為とみなされます。
嫉妬心・独占欲からこうした行為に走る人がいるとされています。

【社会的隔離とみなされる行為】
・配偶者の生活や人間関係、行動に対して無視をしたり制限をしたりする
・実家や友人との付き合いに制限をもうけて配偶者を独占しようとする

(6) 子どもを使った暴力 
子どもを使った暴力
より悪質なDVとして子どもを巻き込んだものもあります。

【子どもを使った暴力とみなされる行為】
・子どもに暴力をふるったり、暴力行為を見せたりする
・配偶者から子どもを取り上げる
・子どもに配偶者の悪口を吹き込んだり、言わせたりする
・子どもに危害を与えると言って脅す

凄惨なDV事件


警察統計によると、日本では今も3日に1人ずつ、妻が夫によって殺されています。
内閣府の調査によると、成人女性の3人に1人がDV被害を体験しており、20人に1人は、殺されそうな目にあっています。これは、年間1200万件の刑法犯罪が起きているということになり、そのうち180万件は殺人未遂事件ということになります。
ところが、対策は追いついていません。DVの相談件数は増えているのに、検挙件数は年間2000件にとどまります。傷害罪や殺人未遂で立件されるべき事件がされていない。だから加害者は野放しになり、同じ犯罪を重ねていくのです。DVというのは、要するに殺人・殺人未遂であり、傷害事件なのだということが理解されていないように思います。 
 
警察庁の統計データ:配偶者からの暴力からみるとDVの実態が見えてきます。

(1)被害者の性別
平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和元年の割合
男性 7,557 10,496 12,440 15,964 17,815 21.7%
女性 55,584 59,412 60,015 61,518 64,392 78.3%

(2)被害者の年齢
平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和元年の割合
10歳代 1,272 1,325 1,359 1,369 1,387 1.7%
20歳代 14,272 15,969 16,508 18,145 19,385 23.6%
30歳代 18,636 20,524 20,873 21,855 22,717 27.6%
40歳代 15,833 17,350 18,066 18,687 19,701 24.0%
50歳代 5,975 6,962 7,491 8,335 9,048 11.0%
60歳代 3,864 4,251 4,093 4,365 4,442 5.4%
70歳以上 3,225 3,512 4,038 4,661 5,474 6.7%
年齢不詳 64 15 27 65 53 0.1%
   
(3)加害者の性別
平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和元年の割合
男性 55,550 59,425 59,939 61,452 64,344 78.3%
女性 7,591 10,483 12,516 16,030 17,863 21.7%
 
(4)加害者の年齢
平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和元年の割合
10歳代 757 802 818 900 956 1.2%
20歳代 11,540 13,164 13,959 15,615 17,057 20.7%
30歳代 18,216 20,056 20,231 21,179 22,088 26.9%
40歳代 16,806 18,285 19,021 19,671 20,481 24.9%
50歳代 7,031 8,176 8,497 9,444 10,061 12.2%
60歳代 4,675 4,951 4,896 4,939 4,988 6.1%
70歳以上 3,994 4,372 4,900 5,566 6,414 7.8%
年齢不詳 122 102 133 168 162 0.2%
 
(5)被害者と加害者の関係
平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和元年の割合
婚姻関係 48,193 53,446 55,338 58,928 62,119 75.6%
内縁関係 5,722 5,767 5,574 5,897 6,174 7.5%
生活の本拠を共にする交際をする関係 9,226 10,695 11,543 12,657 13,914 16.9%
 
 配偶者からの暴力事案等の検挙件数
   平成27年  平成28年  平成29年  平成30年  令和元年
 刑法犯・他の特別法犯 7,914 8,291 8,342 9,017  9,090 
                 殺人(既遂) 3 2 1  2  3
 殺人(未遂) 96 100 90  109  110
 傷害致死 2 0 3  3  2
 傷害 2,963 2,991 2,934  2,958  2,784
 暴行 4,091 4,409 4,510  5,233  5,384
脅迫 143 153 149  110  127
強姦 10 4 11  6  6
 強制わいせつ 1 5 0  5  2
 住居侵入 59 62 63  46  47
 逮捕監禁 18 20 21  12  19
 器物損壊 99 116 109  89  102
 公務執行妨害 - 32 32  24  31
 現住建造物等放火 - 14 15  11  15
 暴力行為等処罰法違反 169 172 238  252  314
 銃刀法違反 49 46 38  39  57
 その他 211 165 128  118  87
 保護命令違反 106 104 80  71  71
注1) 刑法犯・他の特別法犯の検挙は、
・複数罪名で検挙した場合は、法定刑が最も重い罪名で計上
・殺人を除き、未遂のある罪については未遂を含む。
・平成27 年までの公務執行妨害、現住建造物等放火は「その他」に計上
・「その他」は、恐喝、名誉毀損、未成年者略取、強盗、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反 等

  DV防止法に基づく対応     
   平成27年  平成28年  平成29年  平成30年  令和元年
 医療機関からの通報  110 126  116  136   122
 裁判所からの書面提出要求  2,794  2,505  2,233  2,092  1,959
裁判所からの保護命令通知  2,415  2,143  1,859  1,726  1,663
      うち接近禁止命令のみ  175  135  126  118  92
 うち退去命令のみ  2  4  2  3  1
 うち接近禁止命令・退去命令  43  27  27  20  19
 うち接近禁止命令・電話等禁止命令  1,589  1,452  1,211  1,131  1,138
 うち接近禁止命令・電話等禁止命令・退去命令  606  525  493  454  413


・DVと共依存について


 日々報道されているニュースの中で、肉体への暴力や言葉の暴力を受け続けてた結果、凄惨な殺人事件になったものが報道される度に「そこまでされているのに、なぜ別れなかったの?」という声を聴きます。
事件のすべてが同じではないですが、大半の被害者の方は、正常な判断が出来ない状態で依存状態にあるのは確かだと思います。

もともと、この依存状態を「共依存」というのですが、私が日々相談を聞いている相談者の6割は共依存状態だと疑っているのが現状です。
共依存とは、共に依存し合う関係をいうのですが、もともとは「アルコール依存症の夫とその面倒を見る妻の関係を指す言葉」としてアメリカで誕生したもの。互いに依存し合い、疲れ切っていても離れられず、ずるずると関係を続けてしまうような人間関係のことを言います。

厚生労働省のページから抜粋すると下記の通りです。
 依存症者に必要とされることに存在価値を見いだし、ともに依存を維持している周囲の人間の在り様。
例えばアルコール依存症の妻は、依存症に巻き込まれた被害者と言えます。一方で家族研究から、妻はアルコール依存症者のそばで病気の維持に手を貸している面があり、間接的にアルコールに依存しているという「共依存」ではないかという考えがでてきました。共依存者は被害者であるとともに共犯者でもあり、相手(依存症者)に必要とされることで自分の存在価値を見いだすためにそのような相手が必要であるという、自己喪失の病気であるといえます。
 共依存の例として以下が挙げられます。「1. いつも飲まないように口うるさくして、本人の否認を増強させている関係」「2. 世話焼きをし過ぎることで、本人がアルコール問題に直面しないようにしている関係」「3. 夫のアルコールによる失敗の後始末をして、世間にはアルコール問題がないかのようにふるまっている関係」「4. 性格の問題とみなして、 アルコール問題を否認している妻」「5. 夫のしらふの時にはお互いに緊張してよそよそしく、飲むと互いに感情が爆発する関係」「6. 夫のしらふの時には妻が支配的で、飲むと暴力で夫が支配する関係」「7. 夫から離れられず、いつも犠牲者としての悲劇のヒロインを演じ続けている妻たち」などです。
もちろん依存症者がどの立場であるかによって、「夫や親」「親戚」「友人」「上司」などに共依存が生じ得ます。

大切なことは、勇気です。

 
 言葉の暴力-精神的な暴力-性的な暴力-金銭的な暴力について

 -モラルハラスメントについて-
 まず、配偶者の怒りと制止を考えてみて下さい。 
どうすれば怒りのスイッチが入るか? どうすれば怒りのスイッチが治まるか?

これを見極めて、会話の録音を継続して行ってください。
モラ夫・モラ妻の大きな特徴として、怒りが爆発すれば言葉の中に必ず矛盾と自己中心的な考えが現れてきます。
これを録音し反訳していくこと、そして日記として記録することが重要です。

・以下作成中です。