協議離婚/ 離婚の流れ
離婚の一連の流れは、クリックして表をご覧ください。
協議離婚
協議離婚するときは、夫婦間に生まれた未成年の子についての親権者の指定と養育費、婚姻中に作られた夫婦の共同財産を清算する方法などについて、夫婦が話し合いによって整理し、そこで決めた内容を離婚 公正証書など契約書に定めることが行われます。
離婚に関する各条件を公正証書に定めるときは、個々の条件を明確にします。
財産分与・年金分割・親権・養育費・面会交流等について公正証書作成の書面の下書きを作成しましょう。
内容として、
① 不貞の事実確認
② 子の親権と離婚の合意
③ 面会交流
④ 養育費
⑤ 特別出費(甲が子の傷病による入院、小、中、高、大学への入学等その他の事由により、子のために特別の出費をしたときは、乙は甲の請求に応じ甲乙協議の上、その費用を支払う。)
⑥ 慰謝料
⑦ 財産分与
⑧ 年金分割
⑨ 清算条項 等をまとめて合意書面として作成します。
家事調停や不貞の相手方に対する損害賠償請求の場合は地方裁判所での裁判となるため弁護士を選任することをお勧めします。
・調停・審判
家事調停については、夫婦関係調整調停(離婚・円満)をはじめとして婚姻費用分担請求(請求額の決定・減額・増額)等々様々な内容に応じて相手方と話し合いをするものです。
| 夫婦関係調整調停(離婚) |
離婚やそれに伴う財産分与,慰謝料,親権者の指定,年金分割の割合などについて話し合う手続 |
| 夫婦関係調整調停(円満) |
夫婦の関係を元の円満な関係に戻すために話し合う手続 |
| 内縁関係調整調停 |
内縁関係にある男女関係について解消することなどについて話し合う手続 |
| 婚姻費用の分担請求調停 |
夫婦の間で,生活費について話し合う手続 |
| 財産分与請求調停 |
離婚に伴う財産分与について話し合う手続(離婚後の場合) |
| 年金分割の割合を定める調停 |
離婚に伴う年金分割の分割割合について話し合う手続(離婚後の場合) |
| 慰謝料請求調停 |
不貞の夫(妻)の相手方に対する慰謝料について話し合う手続 |
| 離婚後の紛争調整調停 |
離婚後に生じた紛争について話し合うための手続 |
| 協議離婚無効確認調停 |
協議離婚届を勝手に出された場合に,これを回復するための手続 |
1 家事調停について
(1)家事調停とは
家事調停とは、家庭内の事件について、裁判官及び調停委員により構成される調停委員会が、紛争当事者双方の言い分を聞き、仲介・あっせんをすることにより、紛争当事者による自主的解決を図ろうとする制度です。
(2)対象事件
家事審判法は、「家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件については調停を行う。」と規定しています(家事審判法17条)。
婚姻費用の分担、養育費の請求、財産分与、親権者の指定・変更、婚姻無効、離婚、相続回復請求権等については、紛争当事者間の話合いにより、解決することが適する事件であり、家事調停手続を利用することができます。
(3)利用方法
家事調停を利用しようと考えている者は、家庭裁判所に家事調停の申立をすることになります。申立書を作成して紛争を管轄する家庭裁判所に提出することになります。
(4)取り下げ
家事調停は、調停調書の成立等により家事調停手続が終了するまでの間であれば、家事調停を申立てた者は自由に家事調停の申立の取り下げをすることができます。
(5)相談場所
家事調停に関して気軽に相談できる場所として、各家庭裁判所に家事相談室が設けてあります。したがって、家事調停の申立書の記載方法等の形式的な相談から、そもそも家事調停の申立をするべきであるか等の相談まで、上記家事相談室に相談することができます。
また、弁護士会等が設けている無料法律相談等を利用して、家事調停に関して相談することもできます。
(6)調停前置主義
(ア)家事審判法上の規定
家事審判法は、家事調停を行うことができる事件について「訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立をしなければならない。」と規定しています(家事審判法18条1項)。したがって、家事調停の対象事件については、訴訟を提起する前に家事調停の申立を行う必要があります。この制度を調停前置主義といいます。
(イ)例外
調停前置主義の例外として、紛争の相手方が行方不明、従前の経緯からして当事者間の話合いによる解決の見込みがない等の事情がある場合で、訴訟の提起を受けた裁判所が事件を調停に付することを適用でないと認めるときは、裁判所はそのまま事件について審理をすることができます。
2 家事調停の申立
(1)申立方法
家事審判規則は、「調停事件は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄とする。」と規定しています。
よって、基本的には相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に家事調停を申立てることになります。
もっとも、紛争当事者間で家事調停を申立てる裁判所について合意をしている場合には、その合意の内容に従った家庭裁判所に申立てることができます。
また、事件の種類によっては、相手方の住所地以外を管轄する家庭裁判所に申立てる必要があります
したがって、事件を申立てるべき家庭裁判所については、近くの家庭裁判所の家事相談室や弁護士に相談することが望ましいと思われます。
(2)申立書の記載事項
(ア)申立書の記載事項
家事調停の申立書には、下記(A)から(F)までの事項を記載する必要があります。
(A)当事者の表示
申立人及び相手方の氏名・住所を記載します。また代理人が申し立てる場合には、その代理人の氏名・住所を記載します。
さらに、申立人又はその代理人は、押印を要します。
(B)作成年月日
家事調停の申立をする日付を記載します。
(C)裁判所の表示
家事調停を申立てる裁判所を記載します。
(D)申立の実情
紛争の経緯等について記載します。
(E)申立の趣旨
申立人が、紛争において、望んでいる解決を記載します。
(F)事件の種類
遺産分割、離婚等、対象事件の種類を記載します。
(イ)申立書の記載例
代表的な家事調停の申立書の記載例としては、当ガイドの「調停の書式・文例」をご覧下さい。
(ウ)申立書の入手場所
家事調停の申立書は、各家庭裁判所に用意してあります。
(3)提出書類
(ア)添付書類
家事調停の申立の際には、申立書の他に、事件の実情を明らかにする証拠書類の提出が必要となります。
(イ)証拠書類
事件の実情を明らかにする証拠書類がある場合には、その原本又は写しを申立書と共に提出することになります。
もっとも、申立書と同時に提出することができない場合でも、後日、証拠書類のみを提出することができます。
必要となる証拠書類については、各家庭裁判所の家事相談室又は弁護士等に相談して下さい。
(4)申立費用
(ア)費用
家事調停の申立に際しては、手数料と郵便切手の費用がかかります。
(イ)手数料
手数料は、収入印紙で支払うことになります。
手数料の額は、一律1200円です。
(ウ)郵便切手
郵便切手は、紛争当事者に関係書類を送るため等に使用されます。
郵便切手の金額は、相手方の人数や事件の種類などによって異なるため、具体的な金額については、各家庭裁判所の家事相談室に相談して下さい。
3 家事調停の出頭等
(1)期日変更の可否
重要な用事のため、指定された期日に家事調停に出頭することができない場合には、期日変更申請書を作成し、それを家庭裁判所に提出することになります。
そして、調停委員会が、家事調停の期日の変更がやむを得ない場合であると判断したときには、期日は変更されます。
期日変更申請書の作成及び提出については、紛争の担当の裁判所書記官又は各家庭裁判所の家事相談室に相談して下さい。
(2)代理人による出頭の可否
家事調停においては、原則として、紛争の当事者が出頭すべきものですが、やむを得ない事由により、家事調停の期日に出頭することができない場合には、家庭裁判所の許可を受けて、代わりの者に出頭させることができます。やむを得ない事由としては、紛争当事者の病気、近親者の重病、葬式等が当たります。
代わりに出頭してもらう人としては、本来は弁護士がなることが望ましいのですが、紛争当事者の配偶者、兄弟等でも可能です。
(3)出頭が困難な場合
(ア)家事審判規則の規定
家事審判規則は、「調停委員会は、事件の実情によって、家庭裁判所外の適当な場所で調停をすることができる。」と規定しています(家事審判規則132条)。
車椅子での生活に加えて、裁判所が紛争当事者の自宅から非常に遠くにある等の事情がある場合には、家庭裁判所以外で調停を行うことが調停委員会により認められる可能性は高いと思われます。
(イ)「事件の実情」
「事件の実情」とは、ケースバイケースですが、家庭裁判所から遠い地域に複数の紛争関係者がいる場合、当事者が病気のため裁判所に出頭することが困難である場合等が当たると思われます。
(ウ)「適当な場所」
「適当な場所」とは、ケースバイケースですが、一方当事者の自宅、公民館等の公的施設などで家事調停が行われることがあります。
4 申立後の手続き等
(1)手続の概要
(ア)紛争当事者間の話合い
家事調停においても、民事調停と同様に、紛争当事者間で紛争に関しての話合いを進め、紛争の解決を図ります。
この話合いで、紛争が解決した場合には、その時点で家事調停は終了します。
(イ)各種調査
紛争の解決のために、専門家の判断を要する場合には、調停委員会が、官庁・公署に対して資料や調査を依頼することがあります。
(ウ)調停案
調停委員会は、紛争当事者の各々の言い分を聞き、紛争について十分に把握できた時には、多くの場合、紛争の適切な解決案として調停案を作成して当事者に示します。
そして、当事者がその調停案に合意した場合には、調停調書が作成され、家事調停は終了します。
一方、当事者がその調停案で合意に至らないときには、調停案の修正を図り、再度当事者に示します。もっとも、紛争当事者間に合意の見込みがないような場合には、家事調停は不成立となり、家事調停は終了します。
(2)当事者間の話合方式
家事調停の当事者間には、感情的対立が激しく、相手方を目の前にしては冷静に話合いをすることができない場合が多々あります。
そのため、調停委員会は、初めは、申立人から紛争に関する言い分を聞き、その間、相手方は待合室で待っていることになります(待合室も当事者ごとに分かれています)。
そして、調停委員会は申立人の言い分を聞き終わると、次に、もう一方当事者の言い分を聞くことになります。
以上のように、家事調停においては、基本的には、紛争の相手方を目の前にして話合いをすることはなく、各々調停委員会に言い分を話すという、話合いの方式が採られています。
(3)調停開始の日時
家事調停の申立がなされると、その紛争に関しての調停委員会が組織されます(原則として、裁判官1名と家事調停委員2名から構成されます)。
この調停委員会が、家事調停を行う日を決定し、紛争の当事者それぞれに、紛争当事者の氏名、調停が行われる期日・場所、出頭義務が記載された調停期日呼出状を送付します。
したがって、家事調停は、この調停期日呼出状に記載された日時に行われます。
(4)要する日数
家事調停は、約1か月~2か月(裁判所によります)に1回のペースで行われます。
そして、家事調停を2回程度行うことにより約7割の紛争が終了し、7回程度行うことにより約9割が終了しています。したがって、通常、家事調停は、1か月2か月から7か月の間で終了しています。
(5)公開の有無
家事調停に関する法律は、「家事調停はこれを公開しない。」と規定しています。
上記規定は、家事調停の申立から終了までの手続が公開されないことだけではなく、家事調停の記録も、第三者に公開されないことを意味します。
したがって、家事調停は、家事調停に関わりのない第三者には一切公開されません。
(6)第三者が調停に立ち会える場合
家事調停に関する法律は、家庭裁判所は、「相当であると認める者の傍聴を許すことができる。」と規定しています。
「相当であると認める者」とは、ケースバイケースになりますが、家事調停に非常に密接に関係している者、当事者の精神的な支えである者等が当たります。
したがって、当事者である息子が冷静に話し合いを行うために、両親の存在が必要であるような場合には、家庭裁判所より、両親の家事調停への立会が許される可能性があります。
(7)当時者死亡後の手続
家事調停の当事者が死亡した場合には、原則として、手続は当然に終了します。
もっとも、一定の事件に関しては、相続人申請をすることにより、調停手続を続行させることができます。
詳しくは、家事相談室又は弁護士等に相談して下さい。
5調停手続きの終了
(1)効果
(ア)家事調停の成立
紛争に関して、当事者間の話合いがまとまると、その内容の調停調書が作成されます。この調書には、原則として、後から不服を唱えることはできません。
この調書には、確定した判決と同様の効力があり、当事者の一方が、調停の内容に従わない場合には、その内容を実現するため、強制執行を申し立てることができます。
強制執行とは、一定の義務を負っている者がその義務に従わない場合に、国の権力によって強制的にその義務を実現させるための制度のことをいいます。
また、家事調停手続においては、調停で定められた義務を相手方が守らない場合に、家庭裁判所が相手方に対して義務の履行の勧告・命令をする制度があります。
(イ)調停調書
調停調書は、家庭裁判所に調停調書交付の請求書を提出することにより受け取ることができます。
調停調書交付の請求書の記載方法等については、紛争の担当の裁判所書記官、家庭裁判所の家事相談室等に相談して下さい。
(2)相手方が調停で定められた事項を守らない場合
(ア)強制執行
家事調停が成立し作成された調停調書には、確定した判決と同様の効力があり、当事者の一方が、調停の内容に従わない場合には、その内容を実現するため、強制執行を申し立てることができます。
強制執行とは、一定の義務を負っている者がその義務に従わない場合に、国の権力によって強制的にその義務を実現させるための制度のことをいいます。
(イ)履行の勧告・命令制度
家事調停においては、調停で定められた義務を相手が守らない場合に、家庭裁判所が相手方に対して義務の履行を勧告する制度があります。
また、調停調書の内容が、金銭の支払いその他の財産上の給付を目的とする義務の履行である場合において、相手方がその義務を守らない場合に、家庭裁判所が相手方に対して、相当の期限を定めて、その義務の履行を命令する制度もあります。
履行の勧告・命令制度は、家庭裁判所に対して履行勧告の申立をすることにより利用することができます。
履行命令制度には、相手方が、家庭裁判所より履行命令を受けたのにもかかわらず、正当な理由なくその履行命令に従わなかった場合には、相手方は10万円以下の過料に処せられます。
(ウ)不成立後の手続(婚姻費用の分担、遺産分割、財産分与等の乙類事件)
家事審判法は、婚姻費用の分担、遺産分割、財産分与等の乙類事件について、「調停が成立しない場合には、調停の申立の時に、審判の申立があったものとみなす。」と規定しています(家事審判法26条1項)。
したがって、乙類事件に関する家事調停が不成立に終わった場合には、自動的に事件に関する審判手続が開始されます。
事件の種類が乙類事件であるか明らかでない場合には、家庭裁判所の家事相談室又は弁護士等に相談して下さい。
(エ)不成立後の手続(夫婦間の離婚問題、婚姻外の男女間の問題等の一般調停事件)
夫婦間の離婚問題、婚姻外の男女間の問題等の一般調停事件に関する家事調停が、当事者間の話合いがまとまらず不成立となった場合には、原則として、家事調停手続は終了します。
例外的に、家庭裁判所が相当であると認める場合には、当事者の申立の趣旨に反しない限度で、事件に関して審判をする場合があります。この審判は、調停に代わる審判と呼ばれています。
調停が不成立となり、審判に移行しなかった場合で、紛争について解決を望む場合には、訴訟を提起する必要があります。
事件の種類が一般調停事件であるか明らかでない場合には、家庭裁判所の家事相談室又は弁護士等に相談して下さい。
6家事調停に代わる審判とは
(1)調停に代わる審判とは
家事審判法は、「家庭裁判所は、調停委員会の調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当該調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のため離婚、その他必要な審判をすることができる。」と規定しています(家事審判法24条1項)。すなわち、調停に代わる審判とは、家庭裁判所が相当であると認めるときに、当事者の申立の趣旨に反しない限度で、事件に関して審判をする制度のことです。
(2)対象事件
調停に代わる審判は、家事調停の対象事件が、婚姻費用の分担、遺産分割、財産分与等の乙類事件の場合には行われず、夫婦間の離婚問題、婚姻外の男女間の問題等の一般調停事件の場合に限り行われます。
(3)異議の申立
調停に代わる審判に異議のある当事者は、2週間以内に家庭裁判所に対し異議を申し立てることにより、この審判は効力を失います。
(4)効力
調停に代わる審判がなされ、当事者が2週間以内に異議を申立てなかった場合には、この審判は確定判決と同様の効力を有します。
したがって、当事者の一方が、調停に代わる審判の内容に従わない場合には、その内容を実現するため、強制執行を申し立てることができます。
強制執行とは、一定の義務を負っている者がその義務に従わない場合に、国の権力によって強制的にその義務を実現させるための制度のことをいいます。
7 家事調停委員とは
法律は、「家事調停委員は、弁護士となる資格を有する者、・・・家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満の者の中から、最高裁判所が任命する。ただし、特に必要がある場合においては、年齢四十年以上七十年未満の者であることを要しない。」と規定しています(民事調停委員及び家事調停委員規則1条)。
したがって、家事調停委員とは、いわゆる有識者である民間人の中から選任された者です。
具体的には、専門的知識経験を有している者として、弁護士、大学の教授、元公務員等が、豊富な社会生活経験を有している者として、定年後のサラリーマン、主婦等が家事調停委員として選任されています。
8 第三者の参加
(1)法律上の規定
家事審判規則は、「調停の結果について利害関係を有する者は、家庭裁判所の許可を受けて、調停手続に参加することができる。」と規定しています。
したがって、家事調停の結果に利害関係を有している者であれば、家庭裁判所の許可を受けることにより、家事調停に参加することができます。
(2)利害関係
「利害関係」には、調停の結果について、直接的又は間接的に法律上の利害関係を有する場合のみならず、直接的又は間接的に事実上の利害関係を有する場合も含まれます。
(3)強制参加
家事審判法は、「家庭裁判所は、相当と認めるときは、調停の結果について利害関係を有する者を調停手続に参加させることができる。」と規定しています(家事審判法12条、20条)。
したがって、自ら家事調停への参加を望んでいない場合であっても、家庭裁判所より、家事調停に参加するよう命じられることもあります。
9 罰則等
(1)罰則の種類
家事審判法は、下記(ア)及び(イ)の場合に罰則を科しています。
(ア)家事調停の呼出しを受けたのにもかかわらず、裁判所に出頭しない場合
(イ)履行命令に違反した場合
したがって、家事調停の当事者となった場合で、(イ)家事調停の呼出し、及び(ロ)履行命令に違反したときには、原則として罰則が科せられます。
(2)呼出に応じない場合
家事審判法上の規定
(ア)家事審判法上の規定
家事審判法は、「家庭裁判所又は調停委員会の呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由なく出頭しないときは、家庭裁判所は、これを5万円以下の過料に処する。」と規定しています(家事審判法27条)。
したがって、家事調停に「正当な事由」なく出頭しなかった場合には、5万円以下の過料を科せられる可能性があります。
(イ)「正当な事由」
上記(イ)の「正当な事由」が認められる場合は、ケースバイケースになりますが、重病であり裁判所に出頭できる状態でない場合等は「正当な事由」が認められますが、単に多忙である等では「正当な事由」は認められません。
(3)履行命令に違反した場合
(ア)家事審判法条の規定
家事審判法は、「当事者又は参加人が正当な事由がなく、履行命令に従わないときは、家庭裁判所は、10万円以下の過料に処する。」と規定しています(家事審判法28条1項)。
したがって、家庭裁判所の履行命令に違反した場合には、10万円以下の過料を科せられる可能性があります。
(イ)「正当な事由」
上記(イ)の「正当な事由」が認められるか否かは、ケースバイケースになりますが、客観的に見て履行命令に違反することが、やむを得ないと認められる場合には、「正当な事由」が認められます。
もっとも、上記正当な事由が認められることは非常に稀なケースに限られます。
(4)家事調停委員による秘密保持
(ア)家事審判法上の規定
家事審判法は、「家事調停委員又はこれらの職に在った者が正当な事由なくその職務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定しています(家事審判法31条)。
すなわち、家事審判法は、家事調停委員に対する罰則を設けることにより、家事調停手続において話した個人の秘密が外部に漏れることを防止しています。
また、家事調停委員は、家庭裁判所より適切な人材として選定された者であることからしても、家事調停で話した秘密が、家事調停委員より外部に漏れることは基本的にありません。
(イ)家事調停委員が人の秘密を漏らした場合
上記(ア)の規定にもかかわらず、家事調停委員が紛争当事者の秘密を外部に漏らした場合には、その被害者は、秘密を漏らした家事調停委員に対して、民事責任、場合によっては刑事責任を追及することができます。
審判離婚について
審判離婚(=「調停に代わる審判」による離婚)とは
日本でいう「審判離婚」は、離婚調停が成立しない(=合意できない)まま終わりそうなときに、家庭裁判所が職権で出す 「調停に代わる審判」 によって離婚を成立させるルートを指します(家事事件手続法284条)。
ただし、この制度は “片方が異議を出さないなら、黙示に同意したものとして扱う” 仕組みなので、後述のとおり実務上は 成立しにくい(レア) のが特徴です。
ざっくり全体像(流れ)
↓
離婚調停(家庭裁判所)
まとまり切らないが、裁判所が「この内容なら衡平で相当」と判断すると裁判所が 調停に代わる審判 を出す(職権)に移行します。
↓
審判書が当事者に送達(告知)
2週間以内に当事者の誰かが異議申立て をすると、その審判は原則として効力を失います(異議が出せる/期間のルールがある)。
※適法な異議が出なければ確定し、確定後に離婚届などの手続へ進みます。
※最大のポイント:異議申立てで“簡単にひっくり返る”
異議申立てが出ると、審判離婚は成立しません(審判の効力が消える)という設計です。
つまり、当事者のどちらかが「やっぱり嫌だ」と思えば、2週間以内に異議を出すだけでストップし得るため、実務では「ほぼ合意に近いのに調停調書にできない」など、かなり限定された場面で使われます。
どんなケースで出やすい?
典型的には次のような局面です(※“よくある”というより、この条件が揃うと出やすいイメージ)。
01、争点が ごく僅か で、裁判所から見て 衡平な落としどころ が明確
02、実質的には合意方向だが、最後の言い回し等で 調停成立に至らない
03、事件の解決を遅らせることが当事者(特に子ども)に不利益で、裁判所が 早期終結が相当と判断しやすい
※(根拠条文として、裁判所が「衡平に考慮し、一切の事情を考慮して」審判できるとされます。)
審判が確定した後に必要な実務(戸籍手続)
審判離婚が確定したら、10日以内に、審判書謄本+確定証明書を添付して市区町村へ離婚届を出す、という案内が裁判所から出されています(※過料の可能性にも言及)。
(実際の添付物・届出先・期限は自治体運用も絡むので、最終的には提出先役所の戸籍窓口で確認するのが安全です。)
審判離婚を“狙うべき局面”チェック
次の条件がそろうほど、審判離婚ルートが現実味を帯びます(ただし、審判を出すかは裁判所の裁量です)。
A. 離婚そのものは双方ほぼOK(=争点が小さい)
「離婚する」ことは両者の前提(または時間の問題)
争点が 最後の条件調整だけ(金額の微差、文言、実務運用など)
B. 異議が出ない蓋然性が高い
相手が「早く終わらせたい」動機が強い(再出発、再婚、仕事、世間体など)
相手が弁護士を付けていても、方針が 合意終結(引き延ばし型でない)
調停内での言動が「決裂させて訴訟へ行きたい」ではない
C. 裁判所が“衡平で相当”な着地を描きやすい
子の監護・面会・養育費の骨格がほぼ固い
財産分与も棚卸しが済み、基準日・対象範囲が見えている
提案が極端でなく、裁判所が採用しやすいバランス案になっている
逆に言うと、相手が「納得しないなら異議を出す」と思っている案件では、審判離婚は構造的に不安定です(2週間の異議で失効)。
“最初から訴訟設計”に寄せるべき局面チェック
次のどれかが濃いなら、調停は通過点として 訴訟を見据えた設計に寄せた方が勝率が上がります。
1) 離婚の可否自体を争う(最大の分岐)
相手が「離婚しない」と明言/条件闘争で実質拒否
破綻の主張が噛み合わない(別居の意味、婚姻継続の意思、同居強要など)
2) 高確率で異議が出る(審判離婚の“致命傷”)
相手が強い敵対姿勢/感情的に「裁判でも何でもやる」
調停で毎回ひっくり返す、宿題を出さない、時間稼ぎが見える
相手代理人が「審判なら異議」と示唆している
3) 争点が重い・多い(裁判所が“まとめ”を出しにくい)
親権・監護の対立が激しい/監護実績が割れている
DV・モラ・アルコール・精神疾患・連れ去り等、判断材料が多い
財産が複雑(事業、複数不動産、退職金、使途不明金、隠匿疑い)
4) 立証勝負になっている
不貞・悪意の遺棄・婚姻費用未払い等、証拠で殴る局面
“言った言わない”ではなく、客観証拠の厚みが勝負
実務的な「二段構え」:迷ったらこれが最適解
多くの案件は、最初から白黒つきません。そこで最適解はこれです。
調停は「審判もあり得る形」に整えつつ、裏で訴訟設計を完成させる
表(調停):「争点を減らす」「数字と運用を固める」「裁判所が採用しやすい案を出す」
裏(訴訟):「破綻・有責・監護実績・収入・財産の証拠を揃え、主張骨子を作っておく」
こうしておくと、もし審判離婚が出て相手が異議を出さなければ → 早期終結
異議が出た/審判が出ない → 即座に訴訟へ移行(時間ロス最小)
※なお、調停に代わる審判に異議が出て失効した場合、類型によっては「一定期間内に訴え提起で、調停申立時に提起したものとみなす」等の扱いが問題になります(期限管理が重要)。
審判離婚を“現実に近づける”調停運用(やるなら)
争点を削る:親権/面会/養育費/財産分与を「骨格→運用」の順で確定
数字を出す:相手の逃げ道を潰す(収入資料、財産一覧、基準日)
極端案を避ける:「裁判所が衡平と判断しやすい」中庸案を置く
異議抑止の材料:相手のメリット(早期解決、費用、世間体、子への影響)を言語化して提示
最後に:あなたの案件で即判定するための3問
これだけ答えが分かれば、かなり精度高く振り分けできます。
相手は「離婚自体」に同意していますか?(条件闘争で実質拒否も含む)
相手(または代理人)が、審判が出たら異議を出しそうですか?
最大争点はどれですか?(親権/面会/養育費/財産分与/慰謝料/年金分割/その他)
ポイントの整理
調停離婚/判決離婚との違い(実務目線)
調停離婚:合意ができれば強い。成立後は基本ひっくり返らない。
審判離婚:裁判所が“まとめ”を提示できるが、2週間の異議で崩れる。
判決離婚(訴訟):争いが深い場合の最終ルート。時間・負担は増えるが、要件を満たせば裁判所が判断する。
使い方の注意(当事者側の戦術)
成立させたい側:
審判送達後の2週間は「相手が異議を出すか」が最大リスク。
争点を増やすと審判が出にくくなるので、調停段階で争点整理(親権・監護計画・養育費・財産分与・年金分割・面会交流など)を詰めておくほど、審判が“効く”可能性が上がります。
止めたい側:
まずは 異議申立て期限(2週間)を落とさない。
異議を出すと原則として審判は効力を失う設計なので、手続を訴訟等に切り替える判断が必要になります。
離婚訴訟(人事訴訟) に移行した段階。
ここから先は「合意形成」より 主張・立証(証拠で勝負) が中心になります。
裁判所の案内に沿って、実務で重要なところだけ噛み砕いて整理します。
1) 離婚訴訟で裁判所が見る“勝ち筋”
裁判上の離婚は、
原則として 民法770条の法定離婚事由のいずれかに当てはまる必要があります(※実務の主戦場は多くが5号=婚姻破綻)。
1号 不貞
2号 悪意の遺棄
3号 3年以上の生死不明
4号 その他婚姻を継続し難い重大な事由(=破綻)
訴訟に入ったら、「気持ち」より ①どの号で行くか/②それを裏付ける客観証拠は何か が全部です。
2) 訴訟の流れ(何がいつ起きるか)
裁判所(公式)の説明ベースで、典型の流れはこうです。
訴状提出(原告):原則、夫または妻の住所地を受け持つ家庭裁判所へ(※調停をした家裁と違う場合の取扱いあり)
↓
訴状送達 → 被告の答弁書提出:呼出状の期日までに答弁書で反論・主張を出す
↓
口頭弁論/進行協議(期日):争点整理、書面のやり取り、証拠提出の順番を決める
↓
証拠調べ:
書証中心+必要なら当事者尋問・証人
↓
和解の打診(和解勧告):条件が固まれば和解離婚で終結もあり
↓
判決 →
確定(控訴等がなければ) → 離婚届(判決書謄本+確定証明書等)
3) 争点は「離婚できるか」だけではない(セットで決まること)
離婚訴訟では、離婚の成否に加え、セットで決める(または同時に争われやすい)項目が出ます。
親権者指定(未成年の子がいる場合)
面会交流/養育費/財産分与/慰謝料/年金分割(別途の手続・合意が絡むことが多い)
裁判は「論点ごとに立証」。特に子ども関係は 監護の実績・生活基盤・継続性が強い材料になります(口先より記録)。
4) “審判→不成立→訴訟”で落としやすい注意点
あなたが言う「審判で不成立」は、多くの場合 調停に代わる審判が出たが、適法な異議で効力が失われた(=成立しなかった)パターンです。異議は原則2週間など期限管理が絡みます。
ここで実務的に大事なのは次の2点です。
基準日(別居日・財産評価日)**がズレると損得が動く→ 財産分与・婚姻費用・養育費で地味に効きます。
調停で積み上げた争点整理を、訴訟用に“再パッケージ”する→ 調停の感覚で話すと負けます。訴訟は「要件事実+証拠」です。
5) いま(訴訟移行直後)にやるべき実務チェックリスト
裁判で強い順に並べます。
A. 「どの離婚事由で行くか」を固定
民法770条の どれを主軸にするかを決め、サブ主張を添える。
例:不貞(1号)+破綻(5号)/悪意の遺棄(2号)+破綻(5号)など。
B. 年表(タイムライン)を1本化
同居?別居?調停?訴訟まで
重大イベント(暴言暴力、金銭、子の監護、浮気発覚等)
それぞれに 証拠(書証)を紐付け(証拠番号で管理)
C. 証拠マップ(主張→証拠→立証趣旨)
裁判所は「何を、どの証拠で、どの要件に当てるか」を見ます。
スクショ・録音・診断書・家計資料・住民票/学校関係・GPS等は 適法性も含めて整理。
D. 子ども案件は“運用設計”まで出す
親権・面会・養育費は、理想論でなく 実装できる運用(送迎、連絡手段、病気時、行事、第三者引渡し等)まで案を出す方が通ります。
E. 財産は「漏れなく・評価可能な形」にする
口座一覧、残高、保険、ローン、車、不動産、退職金見込など
不明金・使途不明金が争点なら、出金履歴の束を作る
F. 住所等の秘匿が必要なら早めに
相手に知られて困る情報がある場合の制度案内があります(裁判所公式)。
民法768条(財産分与) (改正法により大きく変わります)
民法762条(夫婦間における財産の帰属)
第762条
1 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
改正後(施行後:2026年4月1日〜)の条文
第768条(財産分与)
1 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 (略)家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。
ただし、離婚の時から5年を経過したときは、この限りでない。
3 家庭裁判所は、
離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、婚姻中に取得・維持した財産の額、寄与の程度、婚姻期間、生活水準その他一切の事情を考慮して、分与の要否・額・方法を定める。
寄与の程度は、異なることが明らかでないときは相等しい。
改正点(ポイント)
請求期限:離婚後2年 → 5年(施行後)
1. 共有財産(名義も実態も夫婦のもの)
夫婦が共同で所有していることが分かりやすい財産です。
(例)
夫婦連名で購入した自宅(ローンを含む・共同債務・連帯債務を含む)
夫婦で使うために購入した家具・家電など
2. 実質的共有財産(名義は一方でも、実態は夫婦のもの)
ここが一番トラブルになりやすいポイントです。
たとえば口座名義が夫(妻)だけでも、
結婚後の給与などを原資に貯まったお金であれば、「夫婦の協力で形成された財産」として財産分与の対象として扱われることがあります。
(例)
夫名義(妻名義)の預貯金 (婚姻後形成した各自の和貯金・各自の給料など)
学資保険、
保険の解約返戻金
退職金(見込額が問題になることもあります) など
ポイント
専業主婦(主夫)でも、家事・育児などを通じて相手の収入を支えたと評価されることが多く、収入がないからといって対象外になるとは限りません。
3. 特有財産(原則として分与の対象外)
夫婦の協力とは関係なく取得した財産です。基本的には、相手に分与する必要はありません。
(例)
結婚前に貯めた貯金
相続した不動産や現金
親から贈与されたお金(例:住宅購入時の頭金の一部)
自分専用の身の回り品(衣類、宝飾品など)
判断が難しいケース(よくある注意点)
理屈では分けられても、実際には次のような場面で判断が難しくなります。
① 結婚前の貯金と結婚後のお金が「同じ口座で混在」している
結婚前の貯金(特有財産)と結婚後の給与(共有財産)を同じ口座で管理し、生活費の出し入れを繰り返していると
「どこまでが結婚前のお金か」を説明・証明しにくくなり、共有財産とみなされるリスクが出ます。
② 特有財産に夫婦のお金を入れて「価値が増えた」
(例)
相続した家(特有財産)や土地や建屋を購入する為に義父母から配偶者に対し購入の為に現金を渡し購入した場合や夫婦の貯金でリフォームした場合などは、リフォームによる
価値の増加分が問題になることがあります。
私が特に大事だと思うこと(証拠の確保)
財産分与をスムーズに進めるために、私が特に重要だと思うのは、
「特有財産であることが分かる資料」を確保しておくことです。
(例)
・結婚した時点の残高が分かる資料(残高証明、通帳の写し)
・相続・贈与が分かる記録(通帳履歴、振込記録、遺産分割協議書 など)
・資料があるだけで、話し合いの見通しが立ちやすくなります。
こんなときは早めの整理がおすすめです
(例)
・口座が複数あり、婚姻前後の資金が混ざっている
・相続・贈与を受けた資金を住宅購入やリフォームに使っている
・退職金や保険など、評価方法が分かりにくい財産がある
罰則規定付きで大きく変わったぞ!! 開示請求義務
改定家事事件手続き及び改正人事訴訟法における情報開示義務
財産分与の実効性確保の視点から
↓ ↓ ↓
調停・審判事件や離婚等の訴訟において、裁判所は、申し立てにより又は職権で、当事者に対し、その財産の 状況に関する情報の開示を求めることが出来る
(家事事件手続法152条の2第2項、人事訴訟法34条の3第2項)。
↓ ↓ ↓
正当な理由なく、情報開示命令に違反した当事者は過料罰金10万円以下に処せられる
(家事事件手続法152条の2第3項、人事訴訟法34条の3第3項)。
不貞の相手方に対する損害賠償(共同不法行為)
1) 不法行為(民法709条)としての「不貞慰謝料」—骨格
不貞相手への請求は、多くの事件で 「不法行為(709条)」の枠で構成されます。要点はこうです。
保護される利益:配偶者が守られる利益として、裁判例はしばしば
「婚姻共同生活の平和の維持」という法的保護に値する利益を挙げます。
違法性の中核:
第三者が「既婚者だと知りながら(又は通常知り得たのに)肉体関係を持った」ことが、上記利益の侵害=不法行為になる、という組み立てです。
“破綻の抗弁”(婚姻がすでに壊れていた)—最重要の防御として被告(不貞相手)側が最も使うのがこれです。
最高裁判所は、「不貞時点で婚姻関係が既に破綻していたなら、特段の事情がない限り第三者は責任を負わない」と判示しています(平成8年3月26日判決として整理される系統)。
つまり、裁判はしばしば 「不貞」そのものより、当時の夫婦関係が“破綻していたか” を精査します。
実務的には
「別居の有無・期間」「生活費の流れ」「同居実態」「夫婦の交流(LINE/家計/行事/同室等)」「離婚協議の進行状況」などが、破綻の認定材料になります。
2) 共同不法行為(民法719条)—なぜ“連帯っぽく”請求できるのか?
不貞は通常、
配偶者(有責)+不貞相手がセットで問題になります。そのため請求構造はこうなりやすいです。
夫(妻)と不貞相手は「共同不法行為者」 → 被害配偶者は、どちらにも(または両方に)請求できる、という構図。
実務上は、被害者が 「回収しやすい方(資力・勤務先が明確等)」 に寄せて請求することもあります(後述の“求償”が絡む)。
注意:和解・示談で「求償」を潰さないと揉める
「不貞相手だけから受け取って終わり」に見えても、不貞相手→配偶者へ“求償(立替分の請求)” が走ることがあります。和解条項で整理しないと、家庭内の二次被害(再燃)になりやすい論点です。
3) “多い言い訳”と、こちら側の潰し方(実務目線
)
A. 「既婚だと知らなかった/聞いてない」
争点:知らなかったことが“やむを得ない”か(通常は 「知り得た」 が問われます)。
潰し方(例):
指輪・自宅同居の痕跡・休日夜間が空かない・家族イベント回避・SNSの家族写真
既婚を匂わせる発言(「子どもが…」「嫁が…」)のログ
ホテル・旅行の行動が「身元を隠す動き」になっている→ 「知らなかった」ではなく “知らないことにした” に寄せる。
B. 「もう夫婦は終わってた(破綻してた)」
争点:破綻の客観性。
潰し方(例):
同居継続/生活費・家計の一体性/夫婦行事の継続
夫婦間メッセージ(修復の試み・関係継続の意思)
別居していても、単なる一時避難・勤務都合・子の養育のため等→ “破綻”は被告が言うだけでは足りず、客観事情で殴る。
C. 「肉体関係はない(友人/相談相手)」
不貞は通常 肉体関係が核心。
潰し方:
ホテル出入り(同時入退室・滞在時間・同室の合理性)
宿泊・旅行の同泊証拠、深夜帯の滞在、金銭の授受
性的関係を推認させるメッセージ(露骨でなくても十分)
D. 「一回だけ/短い期間だからゼロ」
ゼロにはなりにくい。金額評価の問題に落ちます。
※慰謝料相場は事案で振れますが、一般向け整理では「離婚あり:100〜300万円程度」「離婚なし:数十万〜100万円程度」と説明されることが多いです。
E. 「時効だから無理」
不法行為の時効は、2020改正後の整理として一般に“知った時から3年”(生命身体侵害は5年)
行為時から20年のいずれか早い方、という説明が基本です。
不貞慰謝料は通常「生命身体侵害」ではないため、まず 3年を意識します。
4) 訴訟の流れ(不貞相手への損害賠償)と注意点
0. まず「目的」を決める
目的①:早期回収(和解優先)
目的②:判決で白黒(証拠勝負)
目的③:離婚協議・親権・財産分与の交渉材料として整える
目的がズレると、証拠の集め方も、請求設計もズレます。
1. 事前フェーズ(ここで勝負が8割決まる)
証拠の棚卸し(ホテル・行動・通信・金銭)
夫婦関係(破綻の有無)を示す資料の整理
請求額レンジの設計(相場×加減要素)
可能なら 内容証明で請求→交渉(時効が迫るなら特に重要)
※内容証明による「催告」で完成猶予(6か月)という説明が一般にされています。
2. 提訴(どこの裁判所?)
140万円以下:簡易裁判所/超える:地方裁判所が原則です。
3. 裁判の進み方(典型)
訴状提出 → 第1回期日
以後、
準備書面の応酬 → 争点整理 → 証拠調べ(尋問等)→ 和解または判決という流れが一般的です。
注意点(実務で痛いところ)
“破綻の抗弁”対策:不貞の前から別居していると、ここで揉めやすい。
当事者適格(誰が原告?):婚姻当事者(被害配偶者)が原告。
共同提訴か単独提訴か:配偶者も一緒に被告にするかは戦略(回収・求償・家庭内影響)。
和解条項:接触禁止・口外禁止・求償・支払方法・違約条項を詰める(詰めないと再燃しやすい)。
5) 「離婚したくない」場合:有責配偶者の離婚請求権(昭和62年9月2日)
結論から言うと、有責配偶者(不貞した側)からの離婚請求は、原則は厳しいが、例外的に認められうる、という枠組みです。
最高裁の有名な整理(昭和62年9月2日系)では、概ね次の事情が揃うと例外的に認容され得ると説明されます。
別居が相当長期に及んでいる
未成熟子がいない
離婚により相手方が 精神的・社会的・経済的に極めて過酷 になるなど、社会正義に反する特段の事情がない
ここでの“未成熟子”や“過酷”が強烈に効きます。
だから「離婚したくない側」は、感情論ではなく、
別居を“長期化させない工夫”(ただし安全最優先)
子の監護・養育の実態
生活基盤の不利益(住居・収入・健康等)
修復意思・修復行動のログを“証拠として”積むのが実務的です。
仕上げ:このテーマで“勝ち筋”を作る順番(超要約)
不貞の立証(ホテル・同泊・継続性)
破綻していなかった立証(同居・家計・交流・修復の意思)
時効管理(3年/20年を基準に逆算)
共同不法行為+和解条項(求償含む)で回収と再燃防止
離婚したくないなら 有責配偶者離婚の“例外要件”を潰す材料を揃え