・法的離婚事由

 ・裁判離婚(判決離婚・和解離婚)は、協議離婚、調停離婚すべてが成立しなかった場合、離婚訴訟を起こし、裁判所が判決をくだします。離婚裁判を起こすには、法的に認められた下記の離婚理由(「法的離婚事由」)がなければなりません

一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。 


民法770条1項5号「その他 婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」

民法770条1項5号は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」を、裁判で離婚を認めてもらうための理由として定めています。

でも、正直に言うと、この条文だけを読んでも、ほとんどの方がこう思います。
「重大な事由って、結局なに?」
「何をしたら“重大”なの?」
「どこからがアウト?」

ここが、この条文の一番ややこしいところです。

1)5号は「婚姻の破綻」を見る条文です

一般論として、5号が問題になるのは、 婚姻関係が破綻していて、回復の見込みがない場合です。
ただし「破綻しているかどうか」は、本人の気持ちだけ(主観)で決まるものではありません。
裁判所は、ざっくり言えば、
  • 主観的要素(本人が本当にもう無理と思っているか、精神的に耐えられないか)

  • 客観的要素(同居状況、暴力の有無、別居期間、生活実態、修復の可能性)
    この両方から、総合的に判断します。
    だから私は、相談者の方に最初にこうお伝えします。
    「“辛い”だけでは足りません。裁判は“事実”で組み立てます」と。

ここからは、5号に該当しやすいものを、実例(判例)をもとに、一つ一つ説明します。


1.婚姻を継続し難い重大な事由に該当しやすい具体例

(1)相手からの暴力・暴言・侮辱(DV・暴力・虐待)

DV、暴力、虐待は、5号の代表例です。
しかもDVは、単に殴る蹴るだけではありません。暴言、人格否定、支配、脅し、侮辱、恐怖で縛る行為まで含めて、実務では「重大な事由」と評価されやすい分野です。
判例でも、常軌を逸した暴力があれば5号に該当するとされています。

  • 夫が、興奮しやすく暴力を振るい、灰皿代わりに使っていた茶器で妻の顔を殴打して傷害を負わせた
    → 5号に該当(最判昭33・2・25家月10巻2号39頁)

また、加害が妻側の場合も、当然に「重大な事由」になり得ます。

  • 妻が夫に対し、一晩中タオルを持っただけの裸でベランダに放置し、子供用二段ベッドで就寝を強要
    背広やネクタイを鋏で切る、就寝中にペーパーナイフで襲い軽傷、水や味噌汁・ミルク等をかける
    → 虐待行為として評価(東京高判昭和58・8・4判時1091号89頁)

さらに、次のように、不貞をした側が暴力・暴言を重ねる例もあります。

  • 不貞行為をした夫が妻をたびたび殴打し、「女も子どももあるから出ていけ」など暴言を繰り返した
    → 5号に該当(大阪地判昭48・1・30判時722号84頁)

私はここを強調します。
DVは「一回殴ったかどうか」だけの問題ではありません。
積み重なった恐怖と支配で、婚姻共同生活が壊れている。この事実が、裁判では重く見られます。


(2)セックスレス・性的異常・性的不能・性交拒否

性生活の問題も、5号の典型です。
ただし、単なる「回数が少ない」とか「淡泊」というレベルではありません。
裁判で問題になるのは、拒否や異常が継続し、婚姻生活の根幹が崩れているケースです。

性的異常の例

  • 性行の途中に妻の靴を取り出し、布団の上で履かせ、電灯の明かりの下で妻の態度を眺めつつ放射
    → 5号に該当(大阪地判昭35・6・23判時237号27頁)

医師の説明を信じて結婚したが実態が違った例

  • 夫が睾丸を切除したが夫婦生活に影響はないとの医師の言を信じて結婚したが、実際にはそうではなかった
    → 5号に該当(最判昭37年・2・6民集16巻2号206頁)

ポルノへの異常な関心と性交拒否

  • 夫がポルノ雑誌に異常な関心を示し、妻との性交渉に応じようとしない
    → 5号に該当(浦和地判昭60・9・10判タ614号104頁)

そもそも性交渉が一度もない例

  • 同居開始から別居まで2か月余り、一度も性交渉を持たず、妻が納得できる対応もせず改善しなかった
    → 5号に該当(京都地判平2・6・14判時1372号123頁)

妻側の性交拒否

  • 妻の性交渉拒否
    → 5号に該当(岡山地津山支判平3・3・29)

私が実務で見る限り、性生活の問題は非常にデリケートで、当事者の羞恥心も強い。
だからこそ、裁判では「感情」よりも、継続性・改善努力の有無・合理的説明の有無が問われます。


(3)嫁・姑問題(親族との不和)/配偶者の親族との不和

親族との不和、いわゆる嫁姑問題も、5号に該当し得ます。
ただしここでのポイントは、単に「姑が嫌」ではなく、配偶者が間に入って調整しない・放置する・加担するなどで、婚姻生活が壊れているかどうかです。

  • 姑が「口のあけ方が悪い」「姑より先にご飯を食べては駄目」「出ていけ」「雪の中で練炭をおこしている、お前はまともなとこが一つもない」等の嫁いびり
    それを知りながら夫が取り持たなかった
    → 5号に該当(盛岡地遠野支判52・1・26家月29巻7号67頁)

また、妻側の親族が介在し続け、夫婦不和が深まった例もあります。

  • 妻の母が夫婦生活に介在し、不和・軋轢が生じた
    その責任は、融和に努めなかった夫にも、一人娘として母に密着しすぎた妻にもあり、夫が主たる有責当事者とはいえない
    → 5号に該当(東京高判昭60・12・24判時1182号82頁)


(4)宗教や信仰上の対立/過度な宗教活動

信教の自由は尊重されるべきです。
ただし、宗教活動が行き過ぎて、夫婦の協力義務や子の監護養育義務を怠り、婚姻生活が破綻するなら、5号の問題になります。

  • 妻が宗教活動(ものみの塔)を最優先し、夫婦の協力義務・子の監護養育義務を怠り、夫が同居生活に苦痛を感じ婚姻が破綻
    → 5号に該当(名古屋地豊橋支判昭50・10・31判タ334号)

  • 妻の過度の宗教活動(創価学会)で夫との精神的共和を失い破綻
    → 5号に該当(仙台地判昭54・9・26判タ401号)

  • 妻が「エホバの証人」に入信し、集会出席・伝道活動等が信教の自由の範囲を超える場合
    → 5号に該当(名古屋地判昭64・4・18判タ682号)


(5)犯罪行為をして服役している場合

現行民法では、犯罪行為それ自体は、条文上の離婚原因として直接は書かれていません。
(旧民法では、破廉恥罪等で刑に処せられたことが離婚原因でした。)

ただし、実務では、

  • 犯罪の内容

  • 軽重

  • 婚姻に与えた影響

  • 服役等で共同生活が成立しない実態

などの事情を総合して、婚姻生活の継続が困難かどうかで5号該当性が判断されます。


(6)不労・浪費・債務/不労働・浪費

働けるのに働かない、ギャンブル、浪費、借金——。
これも、婚姻生活の基盤を壊す典型です。

  • 夫が妻の収入を頼り、定職に就かず遊惰な生活に流れ、麻雀で生活の資を得ようとする
    → 5号に該当(東京高判昭和54・3・27判タ384号)

  • 夫が確たる見通しなく転職を繰り返し、安易に借財に走り、返済援助を妻らに求めるなど、けじめのない生活態度
    → 5号に該当(東京高判昭59・5・30判夕532号249頁)


(7)性格の不一致・価値観の相違(ただし“破綻レベル”が条件)

5号は幅広いので、「性格の不一致」もここに含まれます。
ただ、裁判で通るのは、単なる「合わない」ではなく、長期にわたり不和が固定化し、回復が困難という実態が必要になります。

  • 知的生活を好む夫とこれを好まない妻。妻がヒステリー性格に基づく失神を繰り返し、夫の求める会話努力を怠った結果、破綻
    → 5号に該当(東京高判昭54・6・21判時937号39頁)

  • 一方が几帳面・清潔好き、他方が逆で事務処理能力を欠く等、妥協し難い性格相違から継続的不和が生じ破綻
    → 5号に該当(東京地裁判昭59・10・17判時1154号107頁)


2.5号事由は「原因は何でもいい」…ただし結論は“破綻”です

私はここを誤解してほしくありません。

5号は確かに幅広いです。
だから「理由と原因はなんでもいい」と言いたくなる気持ちは分かります。

でも、法的に重要なのは、原因の名前ではなく、結論として

  • 夫婦関係が破綻している

  • 関係回復が見込めない

この状態に至っているかどうかです。

つまり、770条1項1号〜4号に当たる事情がなくても、
婚姻を継続し難い重大な事由があるなら、離婚請求は可能です。


3.最後に(私は必ず「一度、戦略を立ててから」進めることを勧めます)

ここまでの例を見て、「うちも当てはまる」と思う方は多いはずです。
ただ、裁判で勝つためには、次の整理が必要です。

  • 何が原因で

  • いつから

  • どの程度

  • どんな証拠で

  • どう破綻が固定化したか

  • 回復が難しい根拠は何か

ここを組み立てないまま進むと、調停でも訴訟でも、相手に言い逃れを許します。

ですから、私は最後に必ず言います。
「一度、弁護士に相談し、“主張と証拠の順番”を決めてから動いてください」と。

立証・証拠編(民法770条1項5号を“裁判で通す”ために)―探偵平松が実務目線で解説します

ここから先は、私が相談者の方に一番強く伝えている部分です。
「もう無理です」「精神的に限界です」――そのお気持ちは痛いほど分かります。
でも、裁判所が動くのは“気持ち”ではなく、事実と証拠です。

民法770条1項5号(婚姻を継続し難い重大な事由)は、範囲が広い分、逆に言えば相手が言い逃れしやすい
だからこそ、私は最初に「立証の設計図」を作ります。


1.立証の基本:裁判所が見ているのはこの3点です

(A)婚姻が破綻しているか(破綻の事実)

夫婦としての共同生活が、実態として壊れているか。

(B)回復の見込みがないか(修復困難性)

話し合い、調停、別居、改善努力――それでも戻れない状況か。

(C)原因が具体的か(何が・いつから・どの程度)

「性格の不一致」みたいな曖昧さだけでは弱い。
具体的な出来事継続性が必要です。

この3点を、証拠で積み上げます。


2.証拠は「種類」より「セット」で強くなる

単体の証拠は、相手に潰されます。
裁判で強いのは、必ず“組み合わせ”です。

私は実務で、次のセットを組むことが多いです。

  • 日記(時系列)+LINE/メール(言動の裏付け)+録音(決定打)

  • 診断書+通院履歴+録音(暴言・脅し)

  • 別居の経緯メモ+婚姻費用の不払い資料+督促履歴

  • 警察・DV相談歴+保護命令関係資料(あれば)+写真

要は、「点」じゃなく「線」にする。
そして最後は「面」――生活全体が壊れている絵にします。


3.具体的な証拠の集め方(カテゴリ別)

(1)DV・暴言・モラハラ系の立証

① 録音(最重要)

暴言、脅し、人格否定、謝罪強要、怒鳴り声。
録音は一発で空気を変える証拠です。

  • 同じ発言が複数回あると強い(継続性)

  • 「日時」「場所」「状況」をメモして保管

  • 可能なら“前後の会話”も残す(切り取りと言われないため)

② 写真・動画(外傷・破損)

  • あざ、腫れ、裂傷、壊れた家具、散乱した部屋

  • 可能なら撮影日時が分かる形で保存

  • 同じ箇所を翌日、翌々日も撮る(治癒経過=真実味)

③ 診断書・受診記録(身体・精神)

DVは身体だけではありません。
不眠、動悸、うつ症状、PTSD傾向なども含めて、医療記録が刺さる場面は多いです。

  • 診断書だけでなく、通院の継続が強い

  • 受診理由を、できれば「家庭内のストレス」「配偶者の暴言等」と医師に伝える

④ 第三者への相談履歴

  • 警察への相談番号、記録

  • 配偶者暴力相談支援センター、自治体窓口

  • 友人・親族への相談メッセージ(いつ誰に何を言ったか)

第三者に早い段階で相談していると、
「離婚のために後から作った話」ではないと評価されやすいです。


(2)セックスレス・性的異常・性交拒否の立証

ここはデリケートなので、やり方を間違えると逆に不利になります。
裁判で重要なのは、次の3点です。

  • 拒否が継続している

  • 話し合い・改善努力がある

  • 婚姻生活に重大な影響が出ている

① 夫婦間のやり取り(LINE・手紙・メモ)

「求めた」「拒否された」の主張は、口だけだと弱い。
だから私は、相談者にこう言います。

直接的な表現ではなくてもいい。
「夫婦としての距離」「身体的接触の拒否」「話し合いの要請」
これが残っていれば強い。

② 時系列メモ(何年、いつから、理由は何と言われたか)

  • 最後の夫婦生活はいつか

  • その後、何回話し合ったか

  • 相手の理由(疲れてる、嫌だ、気持ち悪い、など)

  • こちらがどんな歩み寄りをしたか

③ 家庭内の実態(別室・家庭内別居)

  • 寝室が別

  • 食事が別

  • 会話がない

  • 生活費も別

セックスレスは「結果」であって、
夫婦の共同生活が壊れている一部として示すと通りやすいです。


(3)悪意の遺棄(770条1項2号)に絡む立証(生活費・同居拒否)

5号で戦う場合も、遺棄に近い事実は強力な材料になります。

① 婚姻費用(生活費)の不払い資料

  • 振込履歴(ないことが証拠になる)

  • 家計簿、通帳、カード明細

  • 生活費を求めたLINE

  • 送金の約束を破った記録

② 別居の経緯の証明

  • いつ出て行った/追い出された

  • 鍵を変えられた

  • 帰宅を拒まれた

  • 荷物を持ち出された/捨てられた

“正当な理由のない別居”か、“DV等による避難”かで評価が変わるので、
別居開始の事情は丁寧に残します。


(4)不貞(770条1項1号)を5号の補強にする立証

1号で戦えるなら1号が軸になります。
ただ、5号で進める場合も、不貞は破綻の材料として非常に強い。

  • ホテル出入り(継続反復)

  • デート状況(親密性)

  • 同棲・宿泊(“一晩”の積み重ね)

  • 交際を裏付けるやりとり(プレゼント、旅行、写真)

ここも私は同じことを言います。
「一回の偶然」ではなく「反復」と「生活への侵食」を撮る」


4.“日記”は最強の基礎資料(ただし書き方が重要)

私は相談者に、必ず日記を勧めます。
日記は、裁判での価値が高い。理由は単純です。
継続反復の証明ができるからです。

日記に書くべき型(テンプレ)

  • 日時(可能なら時刻)

  • 出来事(何が起きたか)

  • 発言(できるだけ原文)

  • 自分の行動(逃げた/謝った/話し合いを求めた)

  • 子どもへの影響(泣いた、眠れない、怖がる等)

  • 証拠の紐づけ(録音ファイル名、写真番号、LINEスクショ等)

※感情は書いていい。ただし、事実の後に書く。
先に感情だけを書くと、相手に「主観だ」と崩されやすいです。


5.調停・訴訟で「証拠の出し方」を間違えると負けます

これも現場で本当に多い落とし穴です。

① 最初から全部ぶつけない

感情的に全部出したくなる。でも、段階があります。
調停で相手が嘘をついた瞬間、そこで証拠が刺さる。

② “弱い証拠”を乱発しない

証拠の山で圧倒するより、
決定打を少数、時系列で出す方が勝ちやすい。

③ 争点を絞る

5号は広い分、論点が散ると負けます。
「DV」なのか、「遺棄」なのか、「性的拒否」なのか。
主戦場を決めて、他は補強に回す。


6.私が相談者に必ずやってもらう「立証の整理表」

最後に、これを作ると一気に勝てる形になります。

立証整理表(自作でOK)

  • ①出来事(例:暴言、暴力、性交拒否、生活費不払い)

  • ②日時

  • ③場所

  • ④相手の言動(原文)

  • ⑤こちらの対応

  • ⑥証拠(録音/写真/LINE/診断書 等)

  • ⑦継続性(同種が何回あるか)

  • ⑧子・生活への影響

これがあるだけで、弁護士との打ち合わせも、調停も、訴訟も強くなります。
要は、戦う前に“地図”を作るんです。

有責配偶者について(詳細)―探偵平松が実務目線で解説します

ここは、離婚の現場で一番こじれやすい論点です。
相談者の方からも、こう言われます。

  • 「浮気したのは相手なのに、なんで相手が強気なんですか?」

  • 「DVしてた側が“離婚したい”って言い出してます。おかしくないですか?」

  • 「別居が長いからって、相手の言い分が通るんですか?」

結論から言うと、“離婚原因を作った側”=有責配偶者が、離婚請求をすると、原則として裁判所は簡単には認めません。
ただし、例外もあります。
ここを理解していないと、戦略を間違えます。


1.有責配偶者とは何か(定義)

有責配偶者とは、婚姻関係を破綻させた主たる原因を作った側、つまり「離婚の原因を作った側」です。

典型例は次のとおりです。

  • 不貞行為(浮気・不倫)をした側

  • DV・暴力・虐待をした側

  • 悪意の遺棄(生活費を入れない・帰って来ない・追い出す等)をした側

  • その他、婚姻を壊す重大な行為を継続した側

ポイントは「どちらにも落ち度がある」ではなく、どちらが主原因かです。
裁判所は、夫婦双方の事情を見ますが、最後は「責任の重さ」で判断します。


2.なぜ有責配偶者の離婚請求は原則ダメなのか

理由はシンプルです。

もし、浮気した側が
「もう気持ちがないから離婚して」
と言って簡単に離婚できるなら、

  • 裏切った側が得をする

  • 被害者側が一方的に切り捨てられる

  • 婚姻制度の保護が壊れる

こうなってしまう。

だから裁判所は、有責配偶者に対して基本的に厳しい姿勢を取ります。
これを実務では、いわゆる 「有責配偶者からの離婚請求は制限される」 という考え方で扱います。


3.有責配偶者でも離婚が認められる「例外」

ここが実務の勝負どころです。
相手が有責なのに「離婚できる」と言い出すのは、この例外を狙っている可能性があります。
裁判所が例外的に離婚を認める方向で見るのは、主に次の3条件です。


(1)別居が長期間に及んでいる

婚姻が事実上終わっていて、戻りようがないと評価されるほどの別居期間です。

ただし、ここで重要なのは、
別居の長さ=自動的に離婚OKではないという点です。

  • 別居が長いだけでなく

  • 夫婦としての実態が完全に消えている

  • 修復の可能性がゼロに近い

この“破綻の客観化”が必要です。


(2)未成熟の子がいない(または子への悪影響が小さい)

ここは裁判所が非常に敏感です。
未成熟の子(まだ十分に自立していない子)がいると、簡単には離婚を認めません。

理由は、子どもの生活や精神面に大きな影響が出るからです。
有責側が離婚を成立させることで、子が不利益を受けるなら、裁判所は止めます。


(3)離婚によって、相手(無責側)が苛酷な状態にならない

ここが軽視されがちですが、現場では重いです。

たとえば、無責側が

  • 経済的に立てない

  • 病気や障害で働けない

  • 生活基盤が崩壊する

  • 住居の確保が難しい

こういう状況で、有責側が離婚を通すのは、基本的に厳しくなります。
逆に言えば、有責側が「財産分与」「養育費」「一定の生活保障」を提示して、苛酷性を減らそうとしてくることもあります。


4.「有責かどうか」で現場が揉める典型パターン

有責配偶者は、必ずこう主張してきます。

パターンA:夫婦はとっくに破綻していた

「浮気した時点で破綻してた」
これは不貞慰謝料でも離婚でも、相手が必ず出す反論です。

だからこちらは、

  • 破綻していなかった証拠(同居実態・会話・生活費・家族行事)

  • 破綻に至った経緯(いつから壊れたか)

  • 浮気後に壊れたなら因果関係

これを時系列で固めます。


パターンB:別居は相手が勝手に出て行った

DV側ほど、これを言います。
「出て行ったのは向こう。俺は悪くない」

だからこちらは、

  • 出て行かざるを得なかった事情(暴言・暴力・恐怖)

  • 退避の合理性(子の安全、心身の限界)

  • 相談履歴(警察・支援センター・医師・第三者)

これで“正当性”を固めます。
ここが弱いと、逆に「遺棄はあなた」と言い返されます。


パターンC:DVは誇張だ、証拠がない

モラハラは特にここで潰されます。
だから私は、DV系は最初から「セット」で組めと言います。

  • 録音(核心)

  • 日記(継続性)

  • 診断書(影響)

  • 第三者相談(作話否定)


5.有責配偶者を“有責”として確定させるための証拠

ここは前章「立証・証拠編」の続きとして整理します。

(1)不貞の証拠

  • ラブホテル入退室の反復

  • 宿泊の反復(一般ホテル・自宅でも“泊まり”が鍵)

  • 親密性(手つなぎ・キス・旅行・プレゼント・頻繁な密会)

  • 交際を裏付けるやり取り(LINE等)

(2)DV・虐待の証拠

  • 録音(暴言・脅し・支配)

  • 写真(外傷・破損)

  • 診断書・通院履歴

  • 警察・支援センター相談履歴

(3)悪意の遺棄の証拠

  • 生活費不払い(通帳、振込履歴、請求メッセージ)

  • 同居拒否(鍵交換、帰宅拒否、追い出し)

  • 放置期間の長さ(単発では弱い、継続が重要)


6.実務での“勝ち筋”:こちらが無責、相手が有責のとき

ここからが戦い方です。

① まず「相手が離婚したい理由」を固定する

相手は都合よく理由を変えます。
不貞がバレたら「性格の不一致」
DVが出たら「別居が長い」
こうやって逃げる。
だから、相手の主張を時系列で記録して、矛盾を作らせます。

② 破綻時期をこちらが主導して決める

「いつ破綻したのか」
ここが不貞・慰謝料・離婚すべてに刺さります。

  • 破綻は不貞より前か後か

  • 別居の理由は何か

  • 生活実態はどうだったか

ここを、日記・LINE・生活費・同居実態で固めます。

③ “例外要件”を潰す

相手が有責でも離婚できる例外を狙うなら、こちらは逆に

  • 子どもへの影響

  • 経済的苛酷性

  • 別居長期の原因が相手(有責側)である点

ここを押さえて、例外を成立させない。

「別居期間と破綻の判断」―別居が何年なら危ないのか/何を揃えるべきか(探偵平松の実務解説)

ここは本当に“時間が武器になる”分野です。
別居が長くなるほど、裁判所は「もう夫婦として戻れないのでは?」という客観的破綻を見やすくなります。逆に言えば、こちらが無責側でも、放置すると相手(有責側)に“時間で押し切られる”リスクが出ます。

1) まず大前提:「何年なら危ない」は一律じゃない

結論:年数だけで決まらないです。
裁判所は、別居期間を重要視しますが、同時に次の事情を“セット”で見ます。

  • 別居の原因(DV退避か、勝手な家出か)

  • 別居中の実態(生活費、子の監護、連絡の頻度)

  • 修復の可能性(話し合いの余地があるか、拒絶が固定化しているか)

  • 子どもの状況(未成熟子の有無、生活への影響)

  • 離婚で無責側が苛酷になるか(経済・住居・療養など)


2) 実務目線の「危ない目安」(ざっくり)

※あくまで“傾向”です。断定ではありません。
私の現場感として、争いがある事件ほど、この目安が体感的に効いてきます。

A. 子どもがいない/子が成人している場合

  • 3〜5年:相手が「破綻」を言い出しやすいライン(油断すると作られる)

  • 5〜8年:破綻の“客観化”が進み、裁判所も「戻らない」方向を見やすい

  • 8〜10年以上:相手(有責側)でも“例外”を狙える土俵に乗りやすい

B. 未成熟の子がいる場合

  • 5年程度でも危険がゼロではないが、子がいると裁判所は慎重

  • ただし、別居が**長期化(8〜10年以上級)**して、かつ

    • 監護環境が完全に固定

    • 当事者の交流が断絶

    • 無責側の生活保障に一定の手当
      こういう事情が重なると、相手は“例外”を本気で取りに来ます。

C. DV・虐待・強い支配が原因での別居(退避型)

ここは逆で、別居が長くても「あなたが出た=悪い」とはなりません。
でも油断は禁物で、相手は必ずこう言います。

  • 「もう何年も別居してる、修復不能だ」

  • 「DVなんて誇張だ」

  • 「子どもにも会わせない、相手が壊した」

だから退避の正当性継続性を証拠で固める必要があります。


3) 裁判所が見る「破綻のサイン」チェックリスト

別居期間の長さ以上に、裁判所が“破綻だな”と判断しやすいサインがこれです。

破綻寄り(危険サイン)

  • 何年も連絡がなく、連絡しても拒絶・無視が固定化

  • 同居再開や面会交流の話し合いが成立しない

  • 婚姻費用の支払いが止まり、長期間放置

  • 生活・住居・学校・交友が完全に別々に固定

  • 片方が新しい交際・同居を開始(これが一気に「戻らない」を強める)

  • 周囲(親族・学校・職場)も「別れた夫婦」扱い

破綻否定に寄る(守れるサイン)

  • 婚姻費用を継続して支払い、家族としての責任が生きている

  • 子の養育や行事に関与し、交流の実態がある

  • 調停などの話し合いに応じ、修復の意思(または安全確保の合理性)が明確

  • 別居の原因が相手の不貞・DV・悪意の遺棄で、因果関係がはっきりしている


4) 「何を揃えるべきか」=証拠セット(これは絶対)

ここは“集める順番”が重要です。私は最初にこの箱を作らせます。

① 別居の起点を確定する証拠(いつから別居か)

  • 別居開始日が分かるLINE・メール

  • 引越し日、転居届、賃貸契約、公共料金開始

  • 住民票・戸籍の附票(取得は弁護士経由が安全)

  • 子の転校・保育園手続きの記録

※相手は「別居はもっと前から」と水増ししてきます。起点は命です。


② 別居理由の正当性(なぜ別居したか/させたか)

DV・モラハラ型

  • 録音(暴言・脅し・支配・経済締め付け)

  • 診断書、通院記録、写真(外傷・破損)

  • 警察相談番号、支援センター相談記録

  • 日記(いつ・何をされたか、継続性)

不貞型

  • 入退室(ホテル・相手宅)反復

  • 親密性(デート・旅行・同棲)

  • 連絡記録、プレゼント、金銭援助

悪意の遺棄型

  • 婚姻費用不払い(通帳・催告)

  • 追い出し、帰宅拒否(鍵交換、立入拒否の証拠)

  • 生活費を入れない実態(家計資料)


③ 別居中の“夫婦としての残り火”の有無(裁判所が見る実態)

  • 婚姻費用の支払い履歴(振込明細)

  • 子の養育費相当の負担、学費、医療費

  • 面会交流の状況(拒否の理由が合理的か)

  • 連絡の記録(修復打診、調停参加姿勢、拒絶の固定化)


④ 「苛酷性」を潰す材料(相手が有責でも離婚を狙う場合に刺さる)

  • あなたの収入・就労状況・健康状態

  • 住居の安定性(追い出されたら困る等)

  • 子の監護状況(生活の中心がどちらか)

  • 生活保護・支援制度の相談履歴(必要に応じて)

相手が「別居長いから離婚!」を取りに来る時、ここを突かれると裁判所は止まりやすいです。


5) 無責側が“時間で負けない”ための動き方

別居が長期化するほど、勝負は「放置した側」が不利になります。
やることはシンプルです。

(1)婚姻費用を必ず動かす(払う側も、請求する側も)

  • 払う側:払っていれば「家族責任を果たしている」になりやすい

  • 請求する側:放置すると「もう夫婦でいる意思がない」扱いに寄りやすい

(2)別居理由を“証拠で固定”する

口で言うより、録音・診断書・日記・相談履歴。
別居の正当性が固まると、「別居が長い」だけで押し切られにくくなります。

(3)修復の意思/安全確保の合理性を記録に残す

  • DV退避なら「安全のため同居は無理、しかし必要な話し合いは応じる」

  • 不貞なら「不貞清算と謝罪、再発防止がない限り同居困難」

“拒否の理由が合理的”であることを、淡々と残すのが強いです。


6) 逆に、有責側が「別居長期」で勝ちに来るときの典型パターン

相手はこう組み立てます。

  1. 別居を長引かせる

  2. 交流を薄くする(連絡を切る)

  3. 子の生活を固定化させる

  4. 「もう回復不能です」と言い出す

  5. 離婚条件(財産分与等)を提示して苛酷性を薄める

だからこちらは、「別居の起点」「別居理由」「生活費」「子の実態」「連絡の履歴」を早期に固める。これで崩しにくくなります。